怖くないのか?
騙してたって怒らないのか……?
なぁ、オレってお前にはどんな風に見えてるんだよ……。
「本当に華原君って優しいよね」
きゃあきゃあとオレを取り囲んで騒ぐ、クラスの女子の声が耳障りだ。
『優しい華原君』がいるなら、お会いしてみたいもんだね。
オレはいつも通り微笑んだまま、やんわりとそいつらを遠ざけて席へ戻ると、桜川と目が合った。
「……………」
一瞬だけ素の表情になって、冷たい目で桜川を見る。
けれど、気にもとめないのか軽く微笑んでから次の授業の準備を始めて……面白くない。
もう少し、動揺くらいすればいいのに。
あの修学旅行の日、何を血迷ったのか……オレは本性を現して、過去を話してた。
人なんて信じないのに。
もしあのことを話したとしても、誰も信じるヤツなんていないだろうけど――
……そう。1番驚いたのは、桜川が話すことなんてないって……ひとかけらでもオレが思っていたことだ。
(そんなことを思うなんてどうかしてる……)
いつもの仮面が剥がされそうになって、自分の席で机につっぷした。
あの日から確実に変わっているオレ。
いや……本当はその前から何かが変わっていたから、あんな話をしたのかもしれない。
嫌だと思いながらも、全てを知った上で笑いかけてくれる桜川が――
(桜川……が?)
「……嘘だろ」
気づけば単純で、胸も頬も熱くなる。
嬉しいだなんて一言で言えない、信じたいからじゃない。
好きだから、信じたいんだ。
……でも本当は、怖いって思っているかもしれない。
騙してたって怒るかもしれない。
けど――
お前は違うんだって信じたいから。
オレに笑ってくれたから。
いつか、好きだと伝えたいよ。
もうオレは1人で仮面舞踏会に立たなくていいんだ。
お前がきっと、一緒にいてくれるから……。
- end -
マッキーはPS2のときから、落とすキャラじゃなくて落とされるキャラだと言われていたけど、私もその1人。
clap
浅野 悠希