マスカレード


302号室 ...01

 怖くないのか?
 騙してたって怒らないのか……?
 なぁ、オレってお前にはどんな風に見えてるんだよ……。



「本当に華原君って優しいよね」
 きゃあきゃあとオレを取り囲んで騒ぐ、クラスの女子の声が耳障りだ。
 『優しい華原君』がいるなら、お会いしてみたいもんだね。
 オレはいつも通り微笑んだまま、やんわりとそいつらを遠ざけて席へ戻ると、桜川と目が合った。
「……………」
 一瞬だけ素の表情になって、冷たい目で桜川を見る。
 けれど、気にもとめないのか軽く微笑んでから次の授業の準備を始めて……面白くない。
 もう少し、動揺くらいすればいいのに。



 あの修学旅行の日、何を血迷ったのか……オレは本性を現して、過去を話してた。
 人なんて信じないのに。
 もしあのことを話したとしても、誰も信じるヤツなんていないだろうけど――
 ……そう。1番驚いたのは、桜川が話すことなんてないって……ひとかけらでもオレが思っていたことだ。
(そんなことを思うなんてどうかしてる……)
 いつもの仮面が剥がされそうになって、自分の席で机につっぷした。
 あの日から確実に変わっているオレ。
 いや……本当はその前から何かが変わっていたから、あんな話をしたのかもしれない。
 嫌だと思いながらも、全てを知った上で笑いかけてくれる桜川が――
(桜川……が?)
「……嘘だろ」
 気づけば単純で、胸も頬も熱くなる。
 嬉しいだなんて一言で言えない、信じたいからじゃない。
 好きだから、信じたいんだ。



 ……でも本当は、怖いって思っているかもしれない。
 騙してたって怒るかもしれない。
 けど――
 お前は違うんだって信じたいから。
 オレに笑ってくれたから。
 いつか、好きだと伝えたいよ。
 もうオレは1人で仮面舞踏会に立たなくていいんだ。
 お前がきっと、一緒にいてくれるから……。

- end -

マッキーはPS2のときから、落とすキャラじゃなくて落とされるキャラだと言われていたけど、私もその1人。
clap

浅野 悠希